日本には、ドイツのマイスターのような資格制度はない。歯科技工士は専門の学校で学び、国家試験に合格すれば誰でもなれる。しかし、どれほど技術的にすぐれていてもそれ以上の資格はなく、技術に応じた社会的待遇も、経済的待遇もない。保険診療であれば、支払われる製作費は決まっている。「私は、技工士の世界でも、ある程度の競争は必要だと考えています。高い技術力を持つ技工士がドイツのマイスターのように認められるようになれば、技工士もやる気が出ます。切磋琢磨するようになり、業界全体のレベルもアップします。患者さんにも大きなメリットになります」平成12年、先生は自分の技工所に歯科クリニックを併設している。ドイツの歯科医と技工士のように、お互いにプロ意識を持ちながら尊重し合い、患者さんのために共同でいい入れ歯をつくりたいという願いを実らせたのだった。